脱毛が原因による毛嚢炎(毛包炎)とその治療法
公開日:2021年03月22日 更新日:2022年09月28日
医療脱毛とは、毛根や毛乳頭にレーザーによる熱刺激を与えて、毛を生やさなくする治療法です。
家庭用脱毛器と違って、クリニックでの脱毛ならずっと毛が生えてこない「永久脱毛」を目指すことができます。
ツルスベ肌を目指す女子なら、一度は受けてみたいと思う治療ですよね。
しかし、心配なのは肌へのダメージではないでしょうか。脱毛による肌トラブルが心配で、脱毛を躊躇しているという方もおられるようです。
確かに、効果の高い脱毛であればあるほど、副反応として肌荒れや毛嚢炎などのリスクがあります。しかし、適切に予防し、ケアをしてあげれば確率を非常に低くすることができるのです。
この記事では、医療脱毛の知っておくべき副反応のひとつである毛嚢炎(もうのうえん)ができる原因、できたときの対処法や予防法を解説します。
この記事を読むことで、脱毛によって起こる毛嚢炎のリスクについて理解が進み、下記のような疑問や悩みが解決されます。
こんな事がわかる
- 脱毛の効果が高いということは、肌の負担も多いのでは?
- なぜ脱毛によって毛嚢炎ができるのか?
- 脱毛後に毛嚢炎ができた時はどうすればいいの?
- 脱毛後の毛嚢炎を予防する方法
目次
毛嚢炎について
毛嚢炎は、毛を包む「毛包」という部分に炎症が生じた状態です。毛包炎ということもあります。
もうすこしわかりやすく言うと、「毛嚢炎=毛穴に菌が入った状態」です。
こう書くと、ニキビのようなものを考えるかもしれませんが、少しだけ違います。
ニキビは皮脂のかたまり(角栓)ができて、毛穴にふたをしてしまいます。この状態を「コメド」といったり、「白色ニキビ」と呼ばれたりします。これが、ニキビの最初の状態です。そこに雑菌が入ると赤くなって、押すと痛みがでます(いわゆる炎症性「ニキビ」)。
これに対して、毛嚢炎は毛穴のつまりだけでなく、様々な要因で雑菌が毛穴に入る状態を言います。例えば、
- かゆみが強くて引っかいてしまう
- ナイロンタオルでこすってしまう
- ストレスで皮脂の分泌が乱れている
- 毛剃りで不十分な処理をしてしまう
などがあげられます。
つまり、ニキビは毛穴のつまりが主体なのに対して、毛嚢炎は菌による炎症が主体といえるでしょう。
毛嚢炎の原因菌としては、ほとんどが皮膚にもともといる「黄色ブドウ球菌」と呼ばれる菌が原因ですが、まれに水辺にいる「緑膿菌」やマラセチアやカンジダなどの「真菌」が原因になっていることもあります。
なぜ脱毛で毛嚢炎が起こることがあるのか?
では、なぜ脱毛で毛嚢炎が起こってしまうのでしょう。
結論から言うと、「レーザーが毛の根本のメラニン色素に反応して、熱刺激を加えるから」です。
もう少し詳しく説明しましょう。
毛の発育に最も重要な部分は、毛を支える「毛包」と呼ばれる部分です。毛包の中の「毛乳頭」という、毛の細胞分裂をする細胞があります。その周りに、毛に色を付ける「メラノサイト」という細胞が取り囲んでいます。したがって、毛を支える一番重要なところにメラニン色素が集まっているといえます。
レーザー脱毛では、こうした毛の構造を利用します。
そもそもレーザーとは、特定の波長の光を抽出してエネルギーを集中させたものです。
レーザー脱毛で使うレーザーは「メラニン色素」に反応する光だけを抽出しています。すると、メラニン色素が特に集まっている所に反応して熱刺激に変わります。そのため、周りの肌を傷つけずに毛乳頭の周りだけ反応させ、その熱刺激で脱毛されるというわけです。
さて、ピンポイントで毛乳頭を刺激するとは言え、毛を支える毛包は熱刺激でダメージを受けており、一時的に皮膚のバリアが壊れている状態になります。
ダメージをうけたときに、たまたま皮膚にいる菌が毛包の中に入り込むと毛嚢炎になります。
まとめると
- レーザーはそもそも毛包(毛乳頭)に熱刺激を加えて永久脱毛する方法
- 熱刺激が加わる以上、毛包にはある程度ダメージが加わってしまう
- ダメージが加わった所に、黄色ブドウ球菌など、皮膚にもともといる菌が毛包に入り込むと「毛嚢炎」になる
ということになります。
では、脱毛後に毛嚢炎になったらどうすればよいでしょうか。
脱毛後に毛嚢炎ができたらどうする?
毛包がダメージを受けて毛穴に雑菌が入っても、もともと人間には免疫能力があります。軽い毛嚢炎の場合は自然に1週間から2週間でおさまってくることがほとんどです。
しかし、「赤いブツブツが広い範囲に多発してきた」場合、「痛みやかゆみが生じてきた」場合は、クリニックに早めにご相談ください。
来院時の流れ
毛嚢炎になった場合の一般的な対処の流れです。
- ❶医師がレーザーでの炎症・毛嚢炎の状態や程度について、丁寧に診察させていただきます。
- ❷医師の診察の結果、程度に応じて、皮膚の菌に対する抗生剤の塗り薬や飲み薬などを処方します。
毛嚢炎がでてきた後は、一度湯舟につかるのは控えて、シャワー浴だけにしてください。タオルでゴシゴシこすらず、やさしく泡で洗うようにしましょう。
激しい運動や合成繊維の下着で毛穴が詰まると、毛嚢炎を悪化させてしまうので注意してください。
もともと乾燥肌でステロイドの塗り薬を使用している方は、毛嚢炎の部分はなるべく使わないほうがよいでしょう。
かゆみを伴う場合は、医師に相談してください。
ブツブツしている部分を無理につぶそうとすると、雑菌をさらに入れてしまう恐れがあります。余計な刺激を与えないことが大切です。
このようなことがないように、なるべくなら毛嚢炎にならないように予防したいですよね。
脱毛した皮膚に雑菌を入れないようにするには、どうすればよいのでしょうか。
脱毛での毛嚢炎を予防する方法
レーザー脱毛により傷ついた肌が修復されるのはおよそ1週間ですが、特に受けた後の数日間が最も重要な期間になります。
毛嚢炎にならないようにするには、一時的に傷ついている肌に雑菌を入れない日常生活を送ることが大切です。
脱毛後の肌の洗い方が大切
肌は常に清潔に保ってほしいのですが、その中でも気をつけていただきたいのが、肌の洗い方です。脱毛した部分は非常にデリケートになっています。
以下の点が、守っていただきたい洗い方の注意点です。
- スポンジやナイロンタオルでこすって洗わず、手でやさしく洗いましょう。
- 泡をつかって優しく洗いましょう。石けんも低刺激性の石けんをつかった方が望ましいです。
- シャワーの流速も弱くして、刺激しないようにしましょう。温度も重要で、40℃以上だと皮膚の乾燥がすすみ、バリア機能が低下します。ぬるめに設定しましょう。
激しい運動は数日は控えましょう
毛穴が汗で詰まると、さらに毛嚢炎になりやすい環境にしてしまいます。肌のダメージが残っている間は激しい運動は避けたほうがよいでしょう。
紫外線を浴びないようにしましょう
紫外線も傷ついた肌にとって大敵になります。特に紫外線の中のUVBが肌のDNAに直接作用して、肌のバリアを悪化させることが言われています。
特に7月~10月は紫外線も多くなるので、できるだけ外出を控え、日焼け止めクリームや日傘などをして、肌を紫外線から守るようにしましょう。
日焼け止めクリームも紫外線の程度に合わせて、皮膚に負担を与えないようにするとよいでしょう。
ムダ毛処理の時は特に注意しましょう
ムダ毛処理は、洗い方以上に気を付けるべきポイントです。直接刃が肌にあたるので、一番ダメージが受けやすくなります。傷ついている部分は触れないようにしながら、刃は毛のながれにそって(順剃り)行うようにしましょう。
カミソリよりも電動シェーバーのほうが肌を傷つけづらく、刃数が多いほうが望ましいでしょう。
レーザー脱毛は数ヶ月おいて何回か行う必要があります。その間の毛の処理は毛嚢炎を起こさずにすると、毛穴に雑菌が入り込まない環境を作ることができます。
毛嚢炎を起こしていると、レーザー脱毛の間隔を伸ばす必要な場合もあります。
そのため普段の肌ケアがとても大切です。
【まとめ】脱毛が原因による毛嚢炎(毛包炎)とその治療法
脱毛後にできる可能性のある毛嚢炎について、治療法や予防のポイントについて解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか?
この記事のポイント
- 脱毛後には皮膚のバリア機能が低下するため、毛嚢炎ができる恐れがある
- 毛嚢炎は1~2週間ほどで自然に治まることが多いが、医療機関での治療が必要になる場合もある
- 医療機関では、必要に応じて塗り薬、飲み薬による薬物療法を行う
- 毛嚢炎を防ぐには、スキンケアを丁寧に行い、肌にできるだけ刺激を与えないようにすることが大切
トイトイトイクリニックでは、医師が常駐しており、脱毛後の肌トラブルに迅速に対応することが可能です。脱毛後に毛嚢炎などの肌トラブルが起こった場合には、早めにクリニックまでご相談ください。
医師が診察し、必要に応じて薬を処方します。患者様が安心して脱毛を受けていただけるよう、アフターフォローを万全に整えて対応させていただきます。
参考文献
1.皮膚科学 改訂第 10 版 / 上野賢一
2.あたらしい皮膚科/ 清水宏
3.毛包炎 – 14. 皮膚疾患 – MSD マニュアル プロフェッショナル版