レーザー脱毛によるワキガへの影響について

ワキガにお悩みの方のなかには、わき毛を剃っている方も少なくないようです。これはわき毛を剃ることでムレを防ぎ、少しでもワキガの匂いを軽減させたいということなのかもしれません。

このように「わき毛とワキガには何かの関係がありそうだ」と薄々感じておられる方は多いでしょう。

では、わきの脱毛をすればワキガは治るのでしょうか?

それとも、かえってワキガを悪化させてしまうのでしょうか?

今回は医療脱毛に用いられるレーザー脱毛を例に、「脱毛とワキガの関係」について総合的な説明をしていきたいと思います。

ワキガのメカニズムを知ろう!

最初に、ワキガとはどういう病気なのか、正しい医学知識を持っておきましょう。

ワキガは漢字では「腋臭」「狐臭」「胡臭」(読みはいずれも「ワキガ」)などと表記されますが、正式疾患名は「腋臭症(えきしゅうしょう)」といいます。ただし、疾患(=病気)とまでいえるかどうかは微妙なところです。

人間は生まれつき体臭の強い人・そうでない人といった個性がありますから、ワキガの匂いもある程度の範ちゅう内であれば「その人の個性」のひとつであると言えます。逆に、まったく体臭のない人はいません。

とはいえ、ワキガの匂いが自分でひどく気になったり、周囲から避けられたりして深刻な悩みの種にまでなってしまうと、疾患として治療が必要でしょう。

ワキガの症状としては、「わきからスパイスのクミンを思わせるような独特のきつい匂いを発する※」「衣服のわきの部分に黄色いシミがつく」などが挙げられますが、特にそれ以上の深刻な症状に発展することはないようです。

※ワキガの匂いは、いわゆる「汗臭さ」などとはあきらかに違うものの、その人の体質や生活環境によって匂いがさまざまに異なるという特徴があります。また、ごく軽いワキガ臭は一種のフェロモン的な役割も果たすのではないかと考えられています。

さて、ワキガの直接の原因とされるのはわきの下に多く分布する「アポクリン腺」という外分泌腺(分泌物を排出する器官)です。

このアポクリン腺からは、思春期になると性ホルモンの影響で脂肪酸を多く含む汗が分泌されるようになりますが、その脂肪酸が皮膚の表面の細菌(常在菌といいます)によって分解され、ワキガの匂いの成分が発生するとされています。

(公益社団法人日本皮膚学会「皮膚科Q&A」より)

また、強いストレスや極度の緊張などが続くと、いわゆる「冷や汗」や「脂汗」と呼ばれる精神的な汗、すなわちアポクリン腺由来の汗が増えるともいわれています。睡眠不足や運動不足もワキガを悪化させる原因になり得ます。

食生活面では、動物性タンパク質や脂質の摂取を控えるとアポクリン腺から分泌される脂肪酸成分が減ると考えられています。

医療脱毛でワキガが治る?それとも悪化させる?

医療脱毛でワキガが治る?それとも悪化させる?

本題に戻り、レーザー脱毛とワキガの関係について説明していきます。

「レーザー脱毛はレーザー光線で毛根を破壊するので、汗腺も一緒に破壊されてワキガが治る」とか、その逆に「脱毛をするとワキガが悪化する」などという話がもっともらしく流布されることがあります。

それどころか、「脱毛をすると毛穴からバイ菌が入ってワキガになる(なりやすくなる)」などといったトンデモ説さえ見受けられます。

もちろん、これらはいずれも医学的に根拠のない話です。上記で説明したワキガのしくみを理解していれば、そのようなことがおこるはずがないことはおわかりいただけると思います。一種の都市伝説と考えたほうがいいでしょう。

また、「私は脱毛でワキガが治った!」とか「脱毛したらワキガが悪化した!」といったもっともらしい体験談を掲載しているサイトもあるようです。体験談はあくまでも個人の感想ですから実際にそう思い込んでいる人もいるのかもしれませんが、あくまで医学的な根拠はないのです。

一般的な医療脱毛では、医療用レーザー光線を照射して毛乳頭などの組織を破壊することで脱毛を行います。しかし「毛根 イコール アポクリン腺」というわけではありません。

アポクリン腺は毛根よりも下にあり、毛根とはわずかに離れています。また毛根のように毛の黒い色素を持ちませんから、レーザー照射で破壊されるということもないのです。

このためレーザー脱毛はアポクリン腺に直接の影響を及ぼすことはなく「治りもしなければ悪化させることもない」と考えられています。

ワキガ治療にはならないが、匂いの軽減には有効!

ワキガ治療にはならないが、匂いの軽減には有効!

上記で説明したように、レーザー脱毛はワキガ治療の直接の役には立ちません。しかし、ワキガの悩みの軽減には有効であるという報告もあります。

その理由としては主に次のふたつが挙げられます。

ひとつめは「脱毛によってわきの下に汗がたまりにくくなるため、アポクリン腺から分泌される脂肪酸もわきの下に長時間とどまることがなくなり、結果的にワキガ臭が減る」というもの。

ふたつめは「わき毛がなくなると、わきの下の常在菌が繁殖しにくくなり、細菌が減るためワキガ臭が発生しにくくなる」というものです。

また、先ほども説明したとおりアポクリン腺は毛根とは別の場所にありますが、アポクリン腺から分泌される汗も普通の汗と同じく毛穴から皮膚に排出されますから、脱毛によって毛穴が引き締まれば汗の分泌量が減り、それにともなってワキガ臭も減る、という医師もいます。

【まとめ】根拠のない話はうかつに信用しないで!

ここでは、医療脱毛に用いられるレーザー脱毛とワキガとの関係についてお話してきました。

まずは、ワキガのメカニズムを理解することで、ネットや雑誌に氾濫しているフェイクニュースの嘘を見破ることができる正しい知識を身につけましょう。

「アポクリン腺」がワキガの真犯人であり、レーザー脱毛とアポクリン腺に直接の関係がないことがわかっただけでも、ほとんどのフェイクニュースにだまされずに済むはずです。

そして、ワキガの治療にはならないまでも、レーザー脱毛はどちらかというとワキガのお悩みの軽減・解消には役立ちそうだということもご理解いただけたと思います。

人間は悩みを抱えていると、根拠のないネガティブな情報に振り回されやすくなるようです。医療脱毛を受けるにせよ受けないにせよ、専門医の診断を受けてみてはいかがでしょうか? どうすれば悩みが解決できるか、正しい情報が得られるはずです。

最近はボツリヌス製剤注射や皮膚切除・剪除など、ワキガ治療についてもさまざまな治療法が進歩してきています。そうした治療法の適応性も含め、皮膚科医師ならではの的確なアドバイスが受けられるはずです。

例) “皮膚科Q&A 汗の病気多汗症と無汗症. 日本皮膚科学会. https://www.dermatol.or.jp/qa/qa32/q05.html, (参照 2019-07-05)

ドクターからのワンポイントアドバイス

医療レーザー脱毛することで、わきが(腋臭症)は治りません。また汗の量にも影響はありません。ただし、ワキ毛がなくなることで臭いの軽減につながる可能性があります。生活習慣を整えて野菜中心の食生活とストレスを少なくすることも、わきがの症状軽減には効果的です。

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